12|センサーという入口から

「感覚の回復」は、終わりではなく始まり

センサーへのアプローチによって、
皮膚や筋膜、関節まわりの感覚が回復してくると、多くの方が口を揃えて、こう言うようになります。

「動きやすくなった」
「呼吸がしやすくなった」
「なぜか気持ちも軽い」

これは、単なる一時的な変化ではなく、
「身体全体とのつながりを取り戻した」という感覚の芽生えだと、わたしは考えています。

センサーはあくまで“入口”です。
その入口を整えることで、
身体全体の情報処理の質が変わってきます。
つまり、自律神経、筋出力、バランス調整、呼吸、姿勢、動作といったあらゆる要素に、
静かに、けれど確実に変化が広がっていきます。

けれど、その時点ではまだ“はじまり”です。
そこから、再び“自分自身の身体”とどう向き合っていくか。
感覚が開かれたあとにこそ、日々の選択と行動の積み重ねが問われます。

感じる力を取り戻し、
気づきながら、確かめながら、
小さな成功体験を積み重ねていくこと。

それが、「感覚を手がかりにした再構築」であり、センサリー・コンディショニングの本質でもあると、わたしは思っています。

そして今、わたし自身もまた、新たな入口に立っているように感じています。

センサーというアプローチを通じて見えてきたのは、
ただのテクニックではなく、「生き方の姿勢」でした。

無理やり変えるのではなく、
押し込むのでもなく、
そっと気づいて、そっと整える。

その営みのなかに、
人が人らしく在るという感覚が宿っているように思うのです。

だからこそ、これからもわたしは、
身体に触れ、感覚を信じ、静かな対話を重ねていきます。
誰かの「本来の力」が、そっと目覚める瞬間に、そっと寄り添えるように。

センサーは、ただの装置ではありません。
それは、身体と心をつなぐ“扉”であり、
一人ひとりが“本来の自分”に戻っていくための道しるべなのだと、今では確信しています。

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