9|再学習という視点から

センサー・タッチは「動きの練習」である

軽く触れる。
その触れた場所を、ほんの少し動かしてみる。
それによって、筋肉の張りや関節の位置、姿勢や呼吸が変わる——

このような体験を、わたしは選手たちと何度も共有してきました。

そして気づいたのです。
これは“治療”ではなく、“動きの練習”なのだと。

センサー・タッチの本質は、
「整える」でも「治す」でもなく、
“正確に感じ取る力”と“身体の微細な動き”を結び直すことにあります。

つまり、センサー・タッチとは、
動きの再学習の“入口”なのです。

実際、関節の動きにクセがある選手や、
ケガをきっかけに力の出し方を忘れてしまった選手に対し、
このアプローチは非常に有効でした。

なぜなら、多くの場合、
その不調は「筋力の問題」ではなく、
センサーのエラー=感覚のズレに起因していたからです。

どこに力を入れていいのかわからない——
それは、「感じ取れないから動けない」状態。

このズレを埋めるために、
強く鍛えるのではなく、
“感じる練習”を通じて、身体を思い出すことが必要だったのです。

ですから、わたしの現場では、
センサー・タッチのあとに必ず「動きの再確認」を行います。
一度タッチで気づいた情報を、
実際のプレーやエクササイズに返していく——
それが、定着のプロセスになります。

この流れを繰り返すことで、選手たちは少しずつ、
「気づき」と「変化」を自分の力で起こせる身体になっていきます。

それはまさに、動きの再学習
センサーを起点にした、新たな身体との対話です。

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