7|“変わること”の再定義

「効いた感じ」がないと不安になる?

センサーへのアプローチを取り入れ始めたころ、多くの選手や保護者の方々がこんな言葉を口にしていました。

「あれ?これだけですか?」
「なんか、効いてる感じがしないです」

それまで「ゴリゴリ」「バキバキ」といった刺激に慣れていた人にとって、軽いタッチや穏やかな動きは、物足りなく感じられるのかもしれません。

わたしは最初、その声に戸惑いました。
「もっと強くしてほしい」と言われたとき、必要以上の刺激を与えるべきか、悩むこともありました。

でも、あるときから考えが変わります。
「“効いた感じ”とは、一体何を指しているのだろう」と。

痛みや強い圧を感じることが、“効いている証拠”とされる風潮。
これは身体の反応ではなく、私たちの“思い込み”から生まれたものではないか——そう気づくようになったのです。

たとえば、センサーへの穏やかな接触によって、

  • 呼吸が深くなる
  • 姿勢が整う
  • 動きが軽やかになる

こうした変化は、“効いた感覚”として意識されにくいかもしれません。

けれど、その内側では確かに、身体が反応している。
神経系が安心し、自律的な調整が始まっている。
そして、それは往々にして「気持ちよさ」として静かに現れるものです。

この「気持ちよさ」も、表層的な快感とは違います。
“正しく触れられたとき”に起こる、深く静かな安堵。
まるで、身体が「やっとわかってもらえた」と言っているかのような——そんな感覚です。

センサーに届く「柔らかい刺激」は、一見、何もしていないように見えることもあります。
けれど、その背後では、本当の変化が始まっています。

わたしは今、選手たちにもこう伝えるようにしています。

“感じなさすぎる”くらいが、
いちばん深く届いているときもあるんだよ

その言葉を信じ、少しずつ変化を実感した選手たちは、やがて「気持ちよさ」の意味を、自分の言葉で語れるようになっていきます。

そしてその瞬間こそが、“感覚”と“回復”が結びついた証であると、わたしは思っています。

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