腰痛と腹横筋

腰痛と腹横筋
“締めて支える” 深層の始まり

初回公開日:2025年4月11日
最終更新日:2025年4月11日

腹横筋は“お腹のコルセット”ではない

「腹横筋は天然のコルセット」と表現されることがありますが、実際には“固める”ものではなく、“締めて調律する”筋肉です。
現場では「お腹を絞って〜」と伝えることが多く、その表現は感覚的にとても適切です。
本記事では、腹横筋の役割と腰痛、体幹安定との関係を整理し、深層から身体を支えるという視点を掘り下げます。

腹横筋とは何か

腹横筋は、外腹斜筋・内腹斜筋よりもさらに深層に位置する腹筋群です。
筋線維は体幹を横に走り、腹腔を取り囲むような構造で、横隔膜・骨盤底筋・多裂筋と連動し「腹圧ユニット」を構成します。
この筋肉の働きは、体幹の安定性だけでなく、呼吸・排泄・声を出すといった動作にも密接に関わっています。

“固める”と“締める”の違い

“固める”とは、圧を閉じ込めて力で止めること。
一方、“締める”は内圧をコントロールし、動きの中で調律することです。
例えば、パンパンに空気を入れた風船は一瞬の安定を生みますが、自由な動きは失われます。
それに対し、程よく絞った状態は“しなやかさ”と“反発力”を生み、動きながら支えるという感覚を引き出します。

腰痛との関係

腹横筋が機能せず、体幹の深部が“締まっていない”状態になると、腰の安定性が低下します。
その代償として、脊柱起立筋や大腰筋が過剰に働き、結果として腰部の張り感や慢性的な痛みにつながります。
逆に、腹横筋が適切に働くと「腰がフッと軽くなる」「支えられている感覚がある」といった変化が起こることを、施術や指導の現場で幾度も体験しています。

感覚を引き出すヒントとアプローチ

  • 「ふーっ」と息を長く吐くことで腹横筋の収縮を引き出す
  • 声を出しながら、お腹を締めていく感覚をつかむ
  • 仰向けや座位で、おへそ周囲の“張りと緩み”のリズムを感じる
  • はり・きゅうや手技と合わせ、感覚を開いていくことで深層の気づきにつながる

大切なのは、筋力ではなく“コントロールする力”を育てること。
その感覚は、過度なトレーニングではなく、「気づきの反復」から生まれます。

まとめ

腹横筋は、ただ「固める」のではなく、「締めて調律する」筋肉です。
この“内なる支え”が備わることで、腰の安定、動きの自由度、そしてパフォーマンス全体が変わります。
深層へのアクセスは、まずは感覚の再教育から。
力ではなく、感度が支える時代へ。

投稿日:2025-04-11

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