センサーと身体の対話:
その② センサーエラーの整理と見立て
シリーズ全体の構成は、こちらの目次ページからご覧いただけます。
はじめに ― エラーは誰にでも起こる
私たちの身体には感覚受容器(センサー)が存在し、日々、外界や体内の変化に応じて働いています。
しかし、センサーが常に正確に機能し続けることは現実的ではありません。
わずかな“誤作動”や“感度のズレ”が生じ、それは日常的に誰にでも起こりうるのです。
このようなセンサーのズレを私たちは「センサーエラー」と呼び、
その蓄積状態をセンサーエラーの“メモリ”として捉えています。
センサーエラーの兆候として見られる例
▶ 感覚・運動のズレ
- 触れられるとやたらと痛がる(アロディニア)
- くすぐったがりすぎる(触覚過敏)
- 動きや姿勢が“変”である
- 左右差が極端、または同じミスを繰り返す
▶ 情動・行動のズレ
- 集中力がない・続かない
- 表情が乏しい・感情の反応が鈍い
- 無意識な自己刺激(掻く・触る・揺らすなど)
- 過緊張/脱力・感覚過敏(光や音など)
▶ 身体・自律神経のズレ
- 極端な姿勢のクセ(反り腰・猫背など)
- 呼吸が浅い・止まりがち
- 睡眠の質が悪い(浅眠/過眠)
- 内臓の不調(消化・生理・排泄の乱れ)
なぜ、こうしたエラーが起こるのか?
感覚受容器には様々な種類があり、それぞれが異なる刺激に応答しています。
受容器 | 刺激 | 特徴 |
---|---|---|
メルケル細胞 | 持続的な圧 | 精細な触感、静的接触に強い |
自由神経終末 | 痛覚、温度、化学反応 | 反応範囲が広く、微細な刺激に過敏 |
マイスナー小体 | 軽い振動 | 滑りや動きに敏感 |
ルフィニ終末 | 皮膚の伸張、関節牽引 | 副交感的・静的ストレッチに反応 |
パチニ小体 | 高速振動、打撃 | 深部の変化に瞬時に反応 |
これらのセンサーが“過敏”または“鈍麻”になっている場合、
入力と出力のバランスが崩れ、身体や心にズレた反応が現れるようになります。
センサーエラーの“メモリ”が問題となる理由
- 誤った感覚が“当たり前”として記憶される
- 行動・呼吸・感情パターンにまで影響を与える
- 本人が「おかしい」と気づきにくくなる
つまり、これは単なる不調ではなく、
「センサーと自分の関係が切れている状態」とも言えるのです。
Epoch Workshopができること
わたしの役割は、このズレに気づかせ、再調整するきっかけを与えることです。
Epoch Five™ センサリー・コンディショニングの役割
- 触れる(センサー・タッチ)
- 感じさせる(意識化)
- 動かす(運動再学習)
- 言葉にする(自己再統合)
これらのプロセスは、「感じて、気づいて、変わる」循環を生み出すための基盤となります。
まとめ ― それでも後押しできる
センサーエラーを完全に消すことはできません。
でも、ズレに気づき、幅をととのえ、再び動き出すことはできます。
Epoch Workshopのコンディショニングは、
身体に備わるセンサーの声を聞き直すこと。
そしてその“メモリ”を書き換えるきっかけを支援するために行うものなのです。
▶︎ 前の記事:
センサーと身体の対話:その① センサーの声を聞くということ
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センサーと身体の対話:その③ センサー・タッチと関節の変化