骨盤底筋群と腹圧
“調律して響かせる” 深層の完成
初回公開日:2025年4月17日
最終更新日:2025年4月17日
はじめに ―「お尻の穴を締める」は本当に正しいのか?
前ページの「腰痛と腹横筋」では、体幹の“しめ方”について触れました。
本記事では、より骨盤底筋群そのものの働きにフォーカスし、“どこをどう締めているのか?”という深層の感覚を言語化していきます。
「骨盤底筋を使って」=「お尻の穴を締める」という指導は、よく耳にするものです。
たしかにそれはひとつの感覚の入り口かもしれません。
しかし、現場で多くの選手やクライアントの動きを見ていると、
そのイメージがかえって呼吸を止め、身体を硬くしてしまっている場面が少なくありません。
骨盤底筋群は、ただ力強く“締める”ためのものではなく、
呼吸や腹圧とともに“調律する”存在なのではないか――
この記事では、そんな視点から骨盤底筋を見直していきます。
骨盤底筋群の構造と役割
骨盤底筋群は、骨盤の底にあるインナーユニットのひとつ。
肛門挙筋(恥骨直腸筋・恥骨尾骨筋・腸骨尾骨筋)や会陰筋などで構成され、
内臓を支えたり、排泄・性機能に関与したりする大切な筋群です。
筋線維の走行は斜め・縦・横と複雑で、
まるで“ハンモック”のように骨盤内の張力バランスを保ちます。
呼吸・腹圧とのつながり
骨盤底筋群は、横隔膜や腹横筋、多裂筋と連動して「腹圧システム」を構成します。
吸気で横隔膜が下がると、骨盤底もわずかに下がり、
呼気で上がるときに、骨盤底筋も“ふわりと戻る”ように動くのが理想です。
このリズムが整うと、
身体の内側にある“気圧”が滑らかに動き、深層の安定と軽やかさを両立させます。
「締める」と「調律する」の違い
「ぎゅっと締める」ことが骨盤底筋の活性だと思ってしまうと、
- 呼吸が浅くなる
- 骨盤が固定されてしまう
- 過緊張が習慣化する
などの弊害が起こります。
それに対し、“調律”は強さよりも柔らかさ・反応のよさを重視します。
あえて言うなら、“ゆるみの中の緊張”や“波のような支え”です。
現場での実感と変化
呼吸を整え、骨盤底筋を“感じ直す”だけで、
- 腰痛が軽くなった
- 股関節が動きやすくなった
- 踏ん張らなくてもジャンプが安定した
といった変化が起こる場面を、何度も目にしてきました。
これは、力を抜いたことによって、芯が通ったという現象。
それこそが、深層の支えの本質かもしれません。
まとめ ―感度が支える時代へ
骨盤底筋群は、ただ“締める”のではなく、
呼吸や腹圧と“響き合うように働く”筋群です。
感覚を研ぎ澄ませることで、
あなたの身体の中にある「深層の調律器」としての力が目を覚まします。