前回の記事では、「刺激を受け取れる身体」
について整理しました。
体力づくりには、
たしかに刺激が必要です。
しかし、その刺激を身体がうまく受け取れなければ、本来の目的とは違う形で、疲労や痛みが積み重なることがあります。
だからこそ、ここまでの連載では、
方法そのものよりも、まず刺激をどう設計するかを大切にしてきました。
その上で、今回はシリーズの最後として、
体力づくりに用いられる代表的なトレーニング方法を整理していきます。
ただし、ここで大切にしたいのは、
どの方法が一番優れているかを決めることではありません。
どの方法を
どの目的で
どの身体に
どの順番で
どの強度で用いるのか
ここを考えることです。
方法は、目的によって意味が変わる
体力づくりには、
さまざまな方法があります。
サーキットトレーニング
HIIT
タバタ式
加圧トレーニング
血流制限トレーニング
プライオメトリクス
反復スプリント
スモールサイドゲーム
どれも、体力づくりの方法として語られることがあります。
しかし、同じ方法でも、
目的によって意味は大きく変わります。
たとえば、同じサーキットトレーニングでも、
心肺機能を高めたいのか、
筋持久力を高めたいのか、
動きの質を保つ練習にしたいのかで、
種目の選び方も、強度も、休息も変わります。
同じジャンプトレーニングでも、
高く跳ぶことを目的にするのか、
着地を整えるのか、
切り返しにつなげるのかで、
見るべきポイントは変わります。
つまり、方法の名前だけでは、
そのトレーニングの意味は決まりません。
大切なのは、
その方法を通じて、何を育てたいのかです。
サーキットトレーニングとHIIT
サーキットトレーニングは、
複数の種目を連続して行う方法です。
HIITは、
高強度の運動と休息を繰り返す方法です。
この2つは、現場ではかなり重なります。
たとえば、
複数の種目を短い休息で高強度に行えば、
それはサーキットトレーニングでもあり、
HIIT的な要素を含むトレーニングでもあります。
スクワット
ランジ
プッシュアップ
ジャンプ
体幹トレーニング
ステップワーク
ダッシュ
切り返し
こうした種目を組み合わせることで、
心肺機能、筋持久力、全身連動、姿勢保持に刺激を入れることができます。
ただし、注意が必要です。
高強度で行うほど、
フォームは崩れやすくなります。
疲れてきた時に、
膝が内側に入りすぎる。
腰が反りすぎる。
肩や首に力が入りすぎる。
呼吸が止まる。
接地が雑になる。
その状態で続けると、
体力づくりではなく、
崩れた動きを繰り返す時間になってしまうことがあります。
だから、サーキットトレーニングやHIITでは、
キツさだけでなく、
疲れた中でも動きの質をどこまで保てるかを見る必要があります。
タバタ式について
タバタ式は、
高強度インターバルトレーニングの代表的な方法として知られています。
一般的には、
20秒運動
10秒休息
8セット
という形式で紹介されることが多いと思います。
ただし、ここで注意したいのは、
タバタ式は「4分で楽に鍛える方法」ではないという点です。
本来のタバタ式は、
かなり高い運動強度を前提にした方法です。
つまり、短時間だから軽いのではなく、
短時間しか続けられないほど強い刺激を入れるものだと考えた方が自然です。
そのため、現場でそのまま真似をする時には注意が必要です。
本当にその強度が必要なのか
フォームを保てるのか
対象者の身体に合っているのか
種目選択は適切なのか
回復は足りているのか
ここを見ずに、
ただ20秒10秒の形式だけを真似ても、
本来の目的とはズレてしまうことがあります。
タバタ式を使うなら、
「短時間で追い込む方法」としてではなく、
短時間で強い刺激を入れるための設計として捉える必要があります。
加圧トレーニングと血流制限トレーニング
加圧トレーニングや血流制限トレーニングは、
腕や脚の付け根付近をカフやベルトなどで圧迫し、血流を一部制限した状態で行うトレーニングです。
大きな特徴は、
比較的軽い負荷でも、筋肉に強い刺激を入れられる可能性があることです。
そのため、
高重量を扱いにくい場合や、
関節への負担を抑えたい場合、
リハビリや段階的な強化の場面で注目および実施されています。
軽い負荷で行える
関節への負担を抑えやすい
筋肉に刺激を入れやすい
高重量が難しい時の選択肢になる
短時間で局所的な疲労感を得やすい
一方で、血流を制限する方法である以上、
安全性への配慮は必須です。
本格的な機器であれば、
圧を管理しながら実施できます。
しかし、簡易的なベルトでは、
どの程度の圧がかかっているのかを正確に把握することは難しくなります。
だから、簡易的な方法を使う場合には、
より慎重に行う必要があります。
強く締めすぎない
長時間行わない
痛みやしびれを無視しない
色の変化や感覚異常を見逃さない
対象者の体調を確認する
無理に追い込まない
加圧や血流制限は、
可能性のある方法です。
しかし、
「軽い負荷でも効く可能性がある」ことと、
「誰でも簡単に安全にできる」ことは同じではありません。
ここは、はっきり分けて考える必要があります。
プライオメトリクス
プライオメトリクスは、
ジャンプ、ホップ、バウンド、リバウンドジャンプなど、
素早い伸張と短縮を伴う動きを用いたトレーニングです。
バスケットボールのように、
跳ぶ、止まる、切り返す、着地する動作が多い競技とは相性の良い方法です。
ジャンプ
着地
反発
接地時間
切り返し
腱の弾性
次の一歩への移行
こうした要素に刺激を入れることができます。
ただし、プライオメトリクスは、
ただたくさん跳べば良いわけではありません。
着地が乱れている。
膝や腰に負担が集まっている。
足裏で地面を捉えられていない。
疲れてくると姿勢が崩れる。
そのような状態で繰り返すと、
反発力を高めるどころか、
負担を増やしてしまう可能性があります。
特に大切なのは、
跳ぶことだけでなく、
着地して次に動けることです。
高く跳ぶ力だけではなく、
着地した後に身体を保ち、
次の一歩へ移る力。
そこまで含めて考えることが、
競技に活き、安全性も踏まえたプライオメトリクスだと考えています。
反復スプリント
反復スプリントは、
短い高強度の走動作を繰り返すトレーニングです。
バスケットボールでは、
長く一定のペースで走る力だけではなく、
短い距離で何度も強度を上げ直す力が必要になります。
5mダッシュ
10mダッシュ
切り返しダッシュ
クローズアウト
ディフェンススライドからのスプリント
リバウンド後の走り出し
トランジションの繰り返し
こうした動きは、
試合中に何度も出てきます。
反復スプリントで大切なのは、
ただ速く走ることだけではありません。
何本目になっても、
姿勢が崩れすぎないこと。
止まった後に、
次の動きへ移れること。
疲れてきても、
判断や反応が大きく遅れないこと。
つまり、反復スプリントは、
スピードだけでなく、
高強度を繰り返す中で動きの質を保つ力を育てる方法でもあります。
スモールサイドゲーム
スモールサイドゲームは、
人数やコートの広さ、ルールを制限した中で行うゲーム形式のトレーニングです。
バスケットボールであれば、
1対1、2対2、3対3、制限付き4対4などが考えられます。
スモールサイドゲームの大きな特徴は、
体力づくりと競技の文脈を切り離しにくいことです。
走る
止まる
切り返す
接触する
判断する
反応する
相手を見る
味方を見る
スペースを見る
これらが同時に起こります。
単なる走り込みとは違い、
疲れた中でも相手を見て、
判断し、
動きを選ぶ必要があります。
その意味で、スモールサイドゲームは、
競技に近い形で体力を育てる方法のひとつです。
ただし、これもただゲームをすれば良いわけではありません。
人数、時間、コートの広さ、ルール、休息、強度をどう設計するかによって、
得られる刺激は変わります。
だからこそ、スモールサイドゲームもまた、
刺激の設計として考える必要があります。
方法を並べるだけでは、体力は育たない
ここまで、代表的なトレーニング方法を整理してきました。
それぞれの方法には、意味があります。
しかし、方法を知っていることと、
それを現場で適切に使えることは別です。
同じHIITでも、
対象者によって意味は変わります。
同じ加圧や血流制限でも、
安全に使える条件は変わります。
同じプライオメトリクスでも、
着地が整っているかどうかで意味は変わります。
同じスモールサイドゲームでも、
ルールや人数、休息によって刺激は変わります。
だからこそ、方法を並べるだけでは、
体力づくりにはなりません。
目的を見る
身体を見る
動きを見る
意識を見る
心を見る
知識を使う
刺激を設計する
ここまで含めて、体力づくりです。
Epoch Five®︎から考える体力づくり
この連載では、
体力づくりを
単なる根性論や方法論としてではなく、
Epoch Five®︎の視点から整理してきました。
身体
動き
意識
心
知識
この5つの柱から見ることで、
体力づくりは、
ただ追い込むことではなくなります。
そして、ただ整えることでも、
ただ鍛えることでもなくなります。
体力づくりとは、
刺激を受け取れる身体を整え、
必要な刺激を入れ、
その変化を確認しながら積み上げていくこと。
方法は、そのための手段です。
サーキットトレーニングも、HIITも、タバタ式も、加圧トレーニングも、血流制限トレーニングも、プライオメトリクスも、反復スプリントも、スモールサイドゲームも、
すべては目的に応じて選ぶものです。
大切なのは、
どの方法が正しいかではありません。
今の身体に、どんな刺激が必要なのか
ここを見極めることです。
それが、
Epoch Five®︎から考える体力づくりです。
気づいた人から変わり始める

参考文献・参考資料
- Tabata I, Nishimura K, Kouzaki M, et al. Effects of moderate-intensity endurance and high-intensity intermittent training on anaerobic capacity and VO2max. Med Sci Sports Exerc. 1996.
- Ma F, et al. Blood flow restriction combined with resistance training on muscle strength and hypertrophy: systematic review and meta-analysis. 2024.
- Zhou JY, et al. Meta-analysis of the effect of plyometric training on physical fitness in youth basketball players. 2024.
- Li T, et al. Effects of small-sided games training programs on physiological and physical fitness adaptations in youth basketball players. 2024.