前回の記事では、
体力づくりにおける「整えること」と「鍛えること」について整理しました。
体力を高めるには、
たしかに刺激が必要です。
しかし、その刺激を身体がうまく受け取れなければ、本来の目的とは違う形で、疲労や痛みが積み重なることがあります。
だからこそ、体力づくりでは、
ただ刺激を強くするのではなく、
刺激を受け取れる身体をつくることが大切になります。
では、刺激を受け取れる身体とは、
どのような状態なのでしょうか。
刺激を受け取れる身体とは何か
刺激を受け取れる身体とは、
ただ柔らかい身体のことではありません。
ただ筋力がある身体のことでもありません。
ただ疲れにくい身体のことでもありません。
わたしは、刺激を受け取れる身体を、
次のような状態として考えています。
呼吸が入る
姿勢が保てる
関節の位置が大きく崩れていない
足裏で地面を感じられる
必要な場所に力が入る
不要な場所の力みが抜ける
疲労や違和感に気づける
動きの崩れを修正できる
こうした条件が整ってくると、
身体は刺激をただの負担としてではなく、
変化のきっかけとして受け取りやすくなります。
反対に、これらの条件が崩れていると、
同じトレーニングでも、身体への入り方が変わります。
鍛えているつもりなのに、
力みが強くなる。
走っているのに、
脚だけが重くなる。
ジャンプしているのに、
膝や腰に負担が集まる。
追い込んでいるのに、
動きの質が落ちていく。
このような時、
必要なのは、さらに強い刺激ではなく、
刺激を受け取る条件の見直しかもしれません。
呼吸が入ること
まず大切なのは、呼吸です。
体力づくりというと、
筋力や心肺機能に意識が向きやすくなります。
もちろん、それらはとても大切です。
しかし、呼吸が浅くなり、
身体全体が力み続けている状態では、
トレーニングの刺激をうまく受け取りにくくなります。
息が入りにくい
すぐに肩が上がる
首や背中が固まる
お腹まわりが動かない
吐き切れない
力を抜くタイミングが分からない
こうした状態では、
身体は常に守りに入りやすくなります。
呼吸が入るということは、
ただ大きく息を吸えるという意味だけではありません。
力を入れる時と、抜く時の切り替えがスムーズにできること。
緊張した後に、身体を戻せること。
疲れてきた時に、呼吸を立て直せること。
それも、
刺激を受け取れる身体の大切な条件です。
姿勢と関節の位置
次に、姿勢と関節の位置です。
どれだけ良いトレーニングでも、
身体の位置関係が大きく崩れたまま行えば、
負担は偏りやすくなります。
膝が内側に入りすぎる
腰が反りすぎる
背中が丸まりすぎる
肩がすくむ
首が前に出る
足首がつぶれる
股関節が使いにくい
こうした状態で強い刺激を入れると、
本来鍛えたい部分ではなく、
守ろうとしている部分ばかりに負担が集まることがあります。
もちろん、常に完璧な姿勢で動く必要はありません(そもそも完璧はありません)。
競技中は、姿勢も関節の位置も変化します。
大切なのは、崩れないことではなく、
崩れた時に戻れることです。
刺激を受け取れる身体とは、
固定されたきれいな姿勢ではなく、
動きの中で大きく崩れすぎず、必要に応じて戻ってこられる身体だと考えます。
足裏で地面を感じられること
体力づくりを考える時、
足裏の感覚はとても重要です。
なぜなら、多くの競技動作は、
地面との関係から始まるからです。
立つ
止まる
切り返す
跳ぶ
着地する
押し返す
次の一歩に移る
これらはすべて、
足裏と地面の関係に支えられています。
足裏で地面を感じられないまま動くと、
身体はどこに力を入れればよいのかをつかみにくくなります。
その結果、膝や腰、肩や首など、
本来とは違う場所で無理に支えようとすることがあります。
体力がないのではなく、
地面から力を受け取る感覚が薄くなっている。
そういうケースも、現場では少なくありません。
だからこそ、体力づくりでは、
ただ筋肉や心肺機能を見るだけでなく、
足裏の感覚や接地の質も、細かく見ていく必要があります。
力みすぎないこと
強くなりたい。
すばやく動きたい。
高く跳びたい。
最後まで走り切りたい。
そう思うほど、
人は力を入れようとします。
しかし、力を出すことと、
力み続けることは違います。
必要な場面で力を出すためには、
不要な力みが抜けていることも必要です。
肩に力が入り続ける
首が固まる
手に力が入りすぎる
呼吸が止まる
背中が張り続ける
脚だけで頑張り続ける
動きの切り替えが遅くなる
このような状態では、
身体は常にブレーキを踏みながらアクセルを踏んでいるような状態になりやすくなります。
体力づくりに必要なのは、
ただ力を入れ続けることではありません。
力を入れる。
力を抜く。
また力を入れる。
この切り替えができることも、
刺激を受け取れる身体の大切な条件です。
違和感に気づけること
刺激を受け取れる身体には、
気づく力も必要です。
痛みが出てから気づく。
大きく崩れてから気づく。
動けなくなってから気づく。
それでは、修正が遅れてしまうことがあります。
大切なのは、
小さな違和感の段階で気づけることです。
いつもより呼吸が浅い
足裏の感覚が薄い
片側だけ重い
膝に少し不安がある
腰に張りが出ている
動き出しが遅い
集中が切れやすい
こうした変化に気づけると、
早めに整えることができます。
早めに整えられれば、
必要以上に守りに入る前に、
身体を立て直しやすくなります。
これは、単なるケガ予防ではありません。
より良い刺激を受け取るための、心身の準備でもあります。
刺激を受け取れる身体は、育てていくもの
刺激を受け取れる身体は、
最初から完成しているものではありません。
日々の練習やトレーニング、
コンディショニングの中で、少しずつ育てていくものです。
呼吸を整える
姿勢を確認する
関節の位置を感じる
足裏で地面を捉える
余計な力みを減らす
違和感に早く気づく
動きの崩れを修正する
こうした積み重ねが、
刺激を受け取れる身体をつくっていきます。
その上で、必要な刺激を入れていく。
そこで初めて、
トレーニングはただの負担ではなく、
身体を変化させるきっかけになります。
体力づくりは、
ただ強い刺激を入れることではありません。
刺激を受け取れる身体をつくり、
その身体に必要な刺激を入れ、
変化を確認しながら積み上げていくこと。
それが、
Epoch Five®︎から考える体力づくりです。
次回は、サーキットトレーニング、HIIT、タバタ式、加圧トレーニング、血流制限トレーニング、プライオメトリクス、反復スプリント、スモールサイドゲームなど、代表的なトレーニング方法について整理していきます。
