Epoch Five®︎から考える体力づくり
|その③ 整えることと鍛えること

前回の記事では、
体力づくりをEpoch Five®︎の5本柱から捉えることについて整理しました。

身体
動き
意識

知識

体力づくりは、
筋力や心肺機能だけで決まるものではありません。

身体の状態
動きの質
意識の向け方
心の安定
知識による理解

それらが重なり合うことで、
競技中に使える体力へと変わっていきます。

では、体力を高めていくために、
実際には何を考える必要があるのでしょうか。

ここで大切になるのが、
「整えること」と「鍛えること」です。


整えることと鍛えることは、別々ではない

スポーツの現場では、
「鍛える」という言葉がとても強く使われます。

もっと走る
もっと跳ぶ
もっと当たる
もっと負荷をかける
もっと追い込む

もちろん、競技力を高めるためには、
一定以上の刺激が必要です。

負荷をかけなければ、
身体はその負荷に適応していきません。

しかし、ここで
忘れてはいけないことがあります。

刺激を入れる前に、
その刺激を受け取れる状態が必要である

ということです。

身体がうまく動いていない
呼吸が浅い
関節の位置が崩れている
不要な力みが強い
疲労が抜けていない
痛みや違和感を無視している

そのような状態で強い刺激を入れても、
身体が良い方向に適応するとは限りません。

鍛えているつもりでも、
守るための緊張が強くなったり、
痛みや疲労が積み重なっていったりすることがあります。

だからこそ、体力づくりでは、
整えることと鍛えることを分けて考えすぎないことが大切です。


整えるとは、単に楽にすることだけではない

「整える」と聞くと、
ただ身体をゆるめることや、
楽にすることを思い浮かべる人もいるかもしれません。

もちろん、痛みが強い時や、
疲労が蓄積している時には、
まず負担を減らすことが必要になる場面もあります。

しかし、コンディショニングにおける「整える」ことは、それだけではありません。

呼吸が入るようにする
姿勢を保ちやすくする
関節が動きやすい位置に近づける
足裏で地面を感じやすくする
余計な力みを減らす
必要な場所に力が入りやすくする
動き出しをスムーズにする

これらも、整えることに含まれます。

つまり、整えるとは、
ただ休ませることではありません。

次の刺激を受け取るための
条件を整えることです。

体力をつけるためには、鍛える前の身体の状態を見ておく必要があります。

そこを見ないまま強度だけを上げると、
本来高めたい能力とは違う場所に負担が集中してしまうことがあります。


鍛えるとは、
ただ追い込むことではない

一方で、整えることだけで体力が高まるわけでもありません。

体力をつけるには、
やはり適切な刺激が必要です。

筋肉への刺激
心肺機能への刺激
筋持久力への刺激
反復動作への刺激
ジャンプや着地への刺激
切り返しへの刺激
判断しながら動く刺激

こうした刺激が入ることで、
身体は少しずつ適応していきます。

ただし、鍛えることは、
ただキツいことをすることではありません。

目的が曖昧なまま追い込むと、
疲れたという事実だけが残りやすくなります。

大切なのは、何を高めるための刺激なのかを明確にすることです。

心肺機能を高めたいのか。
筋持久力を高めたいのか。
接触に耐える力を高めたいのか。
着地から次の動作へ移る力を高めたいのか。
疲れた中でも判断を落とさない、消さない力を高めたいのか。

目的が変われば、
必要な刺激も変わります。

だからこそ、鍛えることもまた、
刺激の設計として考える必要があります。


整えずに鍛えると、身体は守りに入る

身体は、危険を感じると守りに入ります。

これは、悪いことではありません。

むしろ、身体を守るために必要な反応です。

しかし、その守る反応が強くなりすぎると、
動きは小さくなり、
呼吸は浅くなり、
力みは増え、
関節や筋肉への負担が偏りやすくなります。

動きが硬くなる
呼吸が止まりやすくなる
肩や首に力が入る
膝や腰に負担が集まる
足裏の感覚が薄くなる
判断が遅れやすくなる
動きの修正がしにくくなる

このような状態でさらに強い刺激を入れると、
身体は鍛えられる前に、
より強く守ろうとしてしまうことがあります。

その結果、
練習量は増えているのに、
動きの質が落ちる。

体力をつけているはずなのに、
疲れやすくなる。

強くなろうとしているのに、
痛みや違和感が増えていく。

そうしたことが起こる可能性があります。

だから、体力づくりでは、
鍛える前に整える視点が必要になります。


鍛えた後にも、整える必要がある

整えることは、トレーニングの前だけに必要なものではありません。

鍛えた後にも、整える必要があります。

なぜなら、強い刺激を入れた後の身体には、
疲労や緊張が残るからです。

呼吸が乱れる
筋肉が張る
関節の動きが悪くなる
姿勢が崩れやすくなる
足裏の感覚が鈍くなる
動きの左右差が出る
集中力が落ちる

こうした変化をそのままにしておくと、
次の練習や試合に、疲労やズレを持ち越してしまうことがあります。

だからこそ、鍛えた後には、
身体の状態を確認し、
呼吸や姿勢、関節の動き、感覚を整え直す時間が必要です。

これは、単なるクールダウンではありません。

次の刺激を受け取るための準備でもあります。

体力づくりは、
トレーニングをして終わりではありません。

刺激を入れた後に、
身体がどう変わったのかを確認するところまで含めて、体力づくりだと考えています。


整える・鍛える・回復する

体力づくりは、
一方向に進むものではありません。

整える
鍛える
回復する
確認する
また整える

この循環の中で、
身体は少しずつ変化していきます。

整えることで、
刺激を受け取る準備ができます。

鍛えることで、
身体に必要な負荷が入ります。

回復することで、
その刺激が身体に定着していきます。

確認することで、
今の身体に何が起きているのかを知ることができます。

そして、また整えることで、
次の刺激へ向かう準備ができます。

この循環がないまま、
ただ刺激だけを増やしていくと、
身体は変化する前に疲れてしまいます。

逆に、整えることだけを続けても、
必要な負荷が入らなければ、
競技に必要な体力は高まりにくくなります。

だからこそ、整えることと鍛えることは、
対立するものではありません。

どちらも必要です。

そして、その順番と量を注意深く見極めることが大切です。


体力づくりは、条件づくりである

体力づくりというと、
どうしてもメニューや方法に意識が向きやすくなります。

サーキットトレーニング
HIIT
タバタ式
加圧トレーニング
血流制限トレーニング
プライオメトリクス
反復スプリント
スモールサイドゲーム

これらの方法には、それぞれ意味があります。

しかし、どの方法を使うか以前に、
今の身体がその刺激を受け取れる状態にあるのかを見なければなりません。

整えること
鍛えること
回復すること
確認すること

この循環の中で、
体力はただの数値ではなく、
競技中に使える力へと変わっていきます。

体力づくりは、根性論ではありません。
ただ追い込むことでもありません。
整えるだけでも、鍛えるだけでもありません。

刺激を受け取れる条件を整え、
必要な刺激を入れ、
その変化を確認しながら積み上げていくこと。

それが、
Epoch Five®︎から考える体力づくりです。

次回は、「刺激を受け取れる身体」について、さらに掘り下げていきます。

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