腸と呼吸が腰を支える
初回公開日:2025年4月6日
最終更新日:2025年4月6日
腰痛というと、多くの方が「筋肉」や「骨格」の問題を思い浮かべるかもしれません。しかし、実際には“内臓の状態”が腰の感覚に大きく関与しているケースも少なくありません。
その中でも特に注目すべきなのが、「腸」と「呼吸(横隔膜)」の働きです。これらは、ただ内臓として機能しているだけでなく、「腰を内側から支える」役割を担っているのです。
腸と腰の不思議な関係
私たちの腸は、筋膜や間膜と呼ばれる構造を通じて、骨盤内や腰部の筋肉とつながっています。特に「結腸の間膜(mesocolon)」や「トルト筋膜(Toldt fascia)」といった組織は、腸と腹膜、腰椎の間をつなぐ“内臓の靭帯”のような存在です。
- 右の上行結腸:腰方形筋や大腰筋と密接に関わる部位。臨床的には、梨状筋に違和感を訴えるケースもあり、過食や消化不良が右腰痛として現れることもあります。
- 左の下行結腸:左の骨盤や腸腰筋に影響。便秘や肝臓負担が左腰痛に。
つまり、腸内環境の乱れは、筋膜的なつながりを通して、腰部の緊張や違和感として現れるのです。
呼吸と腰椎のつながり
もうひとつ重要なのが、「呼吸」と「横隔膜」の存在です。横隔膜は、実は腰椎(第1~第3腰椎)に付着している筋肉であり、呼吸が浅くなると、その周囲の緊張バランスも崩れてきます。
以下のような兆候は、横隔膜の可動性低下を示すサインかもしれません:
- みぞおち周辺が硬い・押すと痛い
- 肋骨の下縁が外に開いている
- 呼吸が浅く、胸でしか吸えていない
このような状態では、腰の安定性は得られず、代償的に他の筋肉(脊柱起立筋や大腰筋)が過緊張を起こし、結果として腰痛が慢性化することもあります。
腸と呼吸の調律が、
腰の違和感を軽くする
実際の現場では、
- 腸の動きや位置を整える施術
- 呼吸の深さを引き出すアプローチ
- 腹圧の「固定」ではなく「調律」すること
これらによって、「ふっと腰の違和感が消える」瞬間に何度も立ち会ってきました。
とくにスポーツ選手の場合、柔軟性やパフォーマンス向上にもつながるため、体幹の可動性を取り戻す意味でも非常に重要な視点になります。
“腰の土台”は、実は内臓にある。
私たちは普段、目に見える筋肉ばかりに注目しがちですが、実はその下層にある「内臓」や「横隔膜」の状態が、腰の感覚に大きく関わっています。
呼吸を整え、腸の働きを高め、腹圧を“波のように調律”する。
それこそが、“内側から腰を支える”という本質に近づく道なのです。