先日の、高校生男子バスケットボール部WEBコンディショニングから。
まっすぐ座って、まっすぐ立ち上がる…スクワットです。
上半身をほとんど前に倒さないように行います。
ヘソの下を絞り、丹田に力を入れ、重心を引き上げるようにしながら、股関節から距骨に向かって力を加えると、グーッと立ち上がることができます。
なお、この時、仙骨や尾骨(動画では、しっぽと呼んでいます)は、身体の中に巻き込まれるような感じになります。
できるようになると、例えば一歩目のするどさやジャンプのすばやさ、高さが格段に変わってきます(先日のリバウンドの話にも確実に繋がります)。
賛否両論…
脊柱の形が〜
骨盤の向きが〜
膝の位置が〜
足の向きが〜
などなど…常識的な観点や医学的な観点から見れば、どちらかと言うと否の方が多いかもしれません。
最初は、立ち上がりの際に上半身が倒れる動作が出るなどで、ほとんどの選手がうまくできません。
ただ、なかにはいわゆる股関節の柔軟性が高く、パッとできてしまう人もいます。
しかし、それもよく見ると体幹部が不安定で、単にグチャッとつぶれるような座り方になっていることが多く見受けられます。
それでは、なぜこのようなスクワットをすることを目指すのか?
第一の理由は、身体の能力面および健康面を向上させるためです。
このスクワットを実現するには、
股関節や足関節の良好な状態や、
体幹部、とくに丹田と言われている辺り(=身体重心)の力や操作をなにより必要とします。
そのため、足首や股関節を小さく動かしたりしながらアライメントや可動状態を改善していったり、姿勢や呼吸と向き合って体幹部の操作を身につけていくという道筋を「しつこいぐらいに丁寧に」たどることとなります。
固まって動いていないところを動かせるようにして、自分の意識で使えるようにする…ということです。
すなわち、この道筋をたどるだけでも身体の能力面および健康面という観点から大きな利点があると言えます。
もちろん、選手によっては時間がかかりますし、身体の損傷状態などから、このスクワット動作が禁忌と思われるときは、決して無理に取り組んでもらうこともしません。
第二の理由としては、瞬間的な力の発揮や流れ、丹田(重心)の把握、さらには重心移動…といった、感覚的でありながらとても重要なものを、明確にスキルとして掴んでもらうためです。
コンタクトのある対人スポーツをプレイするにあたって、
予備的な動きを少なくして気配を悟られないようにしながらスッと動きだすことや、
瞬間的に爆発的な力を出すということは、
多様化している競技スキルを身につけて、さらに向上させるために、非常に大きく役立つと考えております。
そういった動きを身につけるには、それまでに考えたこともなかった力の出し方とか、自分の身体や動きがどうなっているか?とか、どんなイメージを持ってプレイしているか?など、いわゆる感覚的な部分がとても大切になってきます。
その感覚を育てていくためには、例えば力の入れ方や抜き方などを、場合によっては大きく変換する必要があるのです。
このスクワットは、普通の立ち上がりとまったく動きや力の入れ方が異なります。
そのコツを冒頭に記しましたが、非常に感覚的な言葉が並んでいます。
最初はなかなか難しい部分もありますが、このスクワットに取り組んでいくことで、力の出し方や重心移動といった感覚をスキル的に身につけていくことができるのです。
なお、ここでいう感覚とは、身体、動き、意識を合わせたものです。
つまり、このスクワットに無理せず取り組んでいき、ある程度でもできるようになるということは、感覚面とスキル面の両方にも利点があると言うことができます。
さて、ここまで取り組む理由的なものを書いてきましたが…何を言っても、動画を見ても、実際にやってみないと絶対に分からない部分ではあると思います。
ただ、これまでの選手たちの変化、そして選手たちが残してきた結果を見てきた経験から…能力向上のためにはこういったやり方もあるというのは事実だとも考えます。
もちろん、このスクワットを上手にできることが最終の目的ではありません。
しかし、実際にしっかり取り組んで少しずつでもできるようになると、その前後で選手の感覚(身体・動き・意識)が大きく変わります。
そのため、進歩の過程やその時の状態を把握するという観点からも、とても重要なスクワットと言えます。
スムーズでシャープな動き…ということをいつも言っておりますが、元からそういう動きができる選手たちだけでなく、多くの選手たちがそのような動きやプレイを身につけ、決して長くはない競技生活を楽しみながら送ってもらいたいと思っています。
最後になりますが、この選手たちとは長いつきあいをさせていただいております。
いつも、顧問の先生方のご理解のもと、非常にしっかり取り組んでくれています。
今回は久々のWEBコンディショニングでしたが、各自が画面の向こうから感覚を探りながらチャレンジし、動画のように見事な動きを見せてくれました。
引き続き丁寧にサポートしてまいります。