Diary

なんでこれが分からなかったのか、いま分からない

ふと思い出したので書きます(少々長くなります)。

かつて九州南方の某県に指導に行かせていただいていた時の話です。

ある女子選手が高校3年生になり、最後のコンディショニング講習が終わってから、東京に戻る前のわたしに言ってくれた言葉があります。

「とがっしー。前のわたしは、なんでこれが分からなかったのか…?いまそれが分からない。」

思慮深く、そして笑顔で、しみじみとわたしに伝えてくれました。
(彼女たちはわたしのことを、とがっしーと呼んでいました。当時はふなっしーが全盛期だったと思います笑)

これ…というのは、

例えば、

体幹のなかの小さな動きだったり、
ヘソの下からクイックな一歩を出すだったり、
体幹の力で一気に跳び上がるだったり…

になります。

もちろん他にも色々ありますが、動きそのものをきちんと捉えるという意味では、どれも同じとも言えます。

とにかく、このひと言には、
「すごいこと言ってるな〜」と本当に感銘を受けました。

こちらとしてはそんな素晴らしい言葉を言ってほしくて指導してきたわけではないのですが、彼女は取り組みの根幹にあるものに気がついて、さらにそれを掴んでくれたのだと思います。

ただ、そこに至るまでに、一般的に面白いというものや、盛り上がるもの、見た目的に派手なものを行ってきたわけではありません。

シーンと静まり返ったなかでゆっくり呼吸
小さくシッポだけを動かす
なかなかシビアなストレッチ
体幹から股関節を通して床を押す動作
体幹から肩関節を通してボールを投げる動作
少々特殊なウエイトトレーニング…

どれもこれも、ぱっと見たらつまらないものばかりです。
繋がりや意味を理解できない大人がほとんどだと思います。
しかし、ダイナミックなバスケットボールを向上させるために、小さくて地味で泥くさいことに取り組んでいったわけです。

彼女も最初は不信感たっぷりで、は?何言ってんの?と超面倒くさそうにしていました。
加えて、新チームがスタートした時は色々な面でどん底で、今年はかなりやばいだろ…?という雰囲気が選手たちをはじめ周囲にも蔓延していたので、そういうところでも大変な思いもありました。

そんな状況からでしたが、年に何回かのセッションを通じてお互いにコツコツ積み上げていったことで、最後は冒頭の言葉が出てきたのです。
さらに、
「とがっしー、みんなで写真撮ろう❗️」
と満面の笑顔で言ってもきました。

ちなみに、このときの彼女がいたチームは、県はもちろんブロック大会も2年連続で制し、全国大会でも活躍しました。
特にブロック大会での2回目の優勝は、決勝での試合が他県で指導していたチームとの対戦、いわゆる指導校マッチでしたので、その時点ではそれ以上ないと言えるサポートができた思い出もあります。

わたしとしては、もろもろ「良かったね〜」という思いです。

わたし自身は、自分の人間としてのレベルが低いことを自覚しておりますが、一応大人と言える世代の人間でありながら若い世代に頻繁に関わる者として、

「選手(若者)が、本人の考えと言葉で、気づきについての表現をする機会を増やしていけたらな…」と思っています。

もちろん目の前にいる人たちは、みんなそれぞれ違いますので、簡単にはいきません。
小さい単位(その日、その時、その1回)で見たら、うまくいかないことの方が多いかもしれません。
しかし、わたしのできることの一つとして、集団としての最大公約数を考え、実行し、それを積み上げていくと、上記のような場面に出会えることが多々あるのも事実です。
なお、その最大公約数は、仮に同じ集団であっても、会うたびに違います。
だから、〇〇式とか〇〇システムに正解はありません。参考にはなっても、そこに頼りきってはいけないとわたしは考えています。

また、そういう意味で言えば、上記の話のときといまでは、取り組みの内容は全然違っています。
選手たちの反応や自分自身の感覚に、毎日何かしらの発見がありますので、違っていくのは当たり前だと感じます。

変わっていないのは、
自分自身と向き合うというところです。

さてその後、この言葉を発した彼女は、このことを覚えているのか…?それはもはやわかりません。
しかし、発した言葉と何かしら気づきを得たというのは事実だと思います。
それは、バスケットボールという競技で残した実績だけでなく、もしかしたらそれ以上に大きな経験というものになったのではないでしょうか?

きっと、その後に出会う多くの人と柔らかく接したり、そこから様々な学びを得てさらなる成長をしたり、それによって頼られたり…しているのではないかな?と思います(完全な希望的観測ですが…)。

このようなエピソードを振り返ってみますと…自分自身と向き合うこと、気づきを得ようとすること…そんなことを毎日の課題の基礎としていると、目の前の出来事に対して謙虚になりますし、落ち着けることによって発見もあると感じます。

ああだこうだと口を出すのではなく、こういったことを子に伝えるのが親としてのつとめ=社会教育の一つではないか?とも思います。

わたし自身まだまだ力が足りておりませんが、このような機会を少しでも多く共有していけるように、引き続き精進を重ねてまいります。

-Diary

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